皆川岳大コラム

クレーム対応:法的責任の有無と解決策

先日ご来店したお客様の事です。
お電話でご予約いただき、ご来店されました。
新規のお客様だったので、カルテに詳細(お名前、住所、メールアドレス、パッチテストの有無)を記入していただき、施術に入りました。
施術箇所はVIOの3箇所です。週末〜海外旅行に行かれるというお客様でした。
※パッチテストとは=使用しているワックス剤で皮膚トラブルを起こさないかチェックするものです。
パッチテストを行うと希望された場合は、お客様の皮膚(見えない箇所)にワックス剤を貼付け、剥がします。
その日の施術はできなくなり、48時間後の皮膚状態を確認するものです。

他のお客様同様、問題なく施術が終了し、その後待合いでお茶をお出しして楽しく会話をして帰られました。
お帰りになる際は「また来ます!」と言っていただけ、とても良いお客様でした。
しかし、次の日、Iラインの粘膜箇所が赤くなっている。ヒリヒリする。と電話がありました。
施術後は赤くなり、腫れてしまう方もまれにいらっしゃるという説明もしていたのですが「そんなの聞いてない」「こんな事なら、やらなければ良かった!」とかなりの剣幕で怒っています。
病院へ行く事を提案しましたが「箇所が箇所なだけに、病院には行けない」とおっしゃいます。こちらで皮膚の状態を確認してみますのでお越し下さい。と提案しても、「もうそんな店には行きたくない!」とおっしゃいます。
結局は
■代金を全額返して欲しい
  →現金書留で送って欲しいという。
■お客様の職場〜私のサロンまでの電車代を出して欲しい
  →本来行かなければ発生しなかったとのことで、電車代を請求しています。
■週末海外旅行に行っても水着が着られないので旅行キャンセル費用を払って欲しい
  →海外に行く為にワックス脱毛をしたとのこと。旅行代金+キャンセル料を請求
施術前には、おこりうる皮膚トラブルの説明もしていますし、皮膚が弱くて心配な方はパッチテストを行ってからお願いします、と、きちんと説明しています。
お客様も納得され、ご自身で「パッチテストはしない」とカルテに記載しています。
「皮膚が赤くなったりする場合があります」という文もあって、カルテ一番下には署名もいただいています。
本当は施術代金の返金もしたくありませんが、私はどこまで応じるべきでしょうか。
私は電車代や旅行キャンセル料まで払わないといけませんか?

近年、社会全体において関心が高まってきているのが、クレーム対応です。悪質な苦情を言う客をモンスタークレーマーなどと呼ぶこともありますが、まずはクレームの内容をしっかりと把握した上で、適切な解決策を提示することが重要です。
■1:問題点
今回のケースは、施術内容に対するクレームであり、それによって生じた損害を賠償することが求められています。
この場合、@そもそも損害を賠償する責任が店側にあるのかという問題と、A賠償責任があるとしてどの範囲までの賠償責任があるのかという問題が存在します。
■2:被害の確認
相談者のケースでは、施術を受けた方(便宜上、「利用者」といいます。)が病院へ行くことを拒み、また店側が皮膚の状態を確認することも拒んでおり、実際に被害が発生しているのかがわからない状況です。
しかしながら、本当に被害が発生しているのかがわからなければ、その損害を賠償するという話にはなり得ません。 利用者の言うように、デリケートな箇所であることから、病院に行くことができないというのもわかりますが、医師の診断書や実際に来店してもらい被害の確認をしないことには、返金には応じられないというのが基本的なスタンスでしょう。
■3:説明内容の確認
もし、利用者に被害が発生していたとしても、それが施術前に説明していた範囲内のものであれば、店側の施術には問題がなかったわけですから、法的責任は発生しないものと考えられます。
今回のケースでは、起こり得る皮膚トラブルの説明やパッチテストの説明が行われており、またカルテにも署名をもらっているということですので、店側には説明義務違反はありません。
また、カルテに署名があることをもって、利用者の同意のもとで、施術が行われたものといえます。
■4:解決策の提示
被害状況を確認できない場合には、返金に応じるべきではありませんが、被害状況を確認できた場合には、施術代金の返金を検討すべきでしょう。
もっとも、先ほど述べたとおり店側に説明義務違反があるわけではありませんので、絶対に施術代金を返金しなければならないわけではありません。
■5:店側に落ち度があった場合
今回のケースとは異なり店側に説明義務違反が認められる場合には、賠償責任が発生します。
その場合に、どの範囲で賠償義務が生じるかは難しい問題ですが、通常の損害賠償においては治療費と慰謝料を支払うことになるでしょう。
損害賠償は、被害回復のための費用を賠償するものなので、理論的には施術代金や交通費、旅行キャンセル費用を支払うということにはなりません。
■6:まとめ
以上のように、クレーム対応については、法的責任の有無を慎重に判断した上で、適切な解決策を提示することが重要となります。
判断に迷われることがある場合には、協会あるいは弁護士にぜひご相談ください。

 
皆川岳大

記事担当:
弁護士 皆川 岳大

 
 
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