皆川岳大コラム

スタッフの退職に伴う相談・トラブルについてQ&A

私(経営者)は、マンションの一室でサロン及びスクール経営をしています。
今年3月に知合いの紹介で技術未経験のスタッフを1から指導、教育し、現在は3名でサロン業務を行っています。
技術を一から指導したので、最低2年は勤めるという約束で雇用しましたが、先月になって「親の具合が悪いから辞めたい」と言ってきました。
お客様からのお話ですが・・・親の具合ではなく、開業準備に入っていると聞きました。当店で勤めて約半年、技術も覚えてくれ、やっとこれから売上UPを図れると期待していた矢先の事です。
何度か話合いましたが、親の看病の為今月で辞めたいとのことです。辞めるまでに、下記を請求したいのですが、可能でしょうか?
全て口頭での話だったので、契約書などはありません。
@スクール生は27万円支払い技術習得している為、スタッフにも27万円請求したい。
A白衣で仕事をしていましたが、一度ワックス剤で汚してしまい新たな白衣を1着買いました。初めの1枚はこちら負担でいいのですが、2枚目はスタッフのミスで必要になった白衣なので白衣代12000円を請求したい。

今回は、スタッフの退職に伴うご相談です。
技術を一から指導したスタッフが技術を習得した後、すぐに退職してしまうことは、経営者としては、到底納得できるものではありません。
ご相談のケースをもとに、このような場合の法律上の問題点について検討してみましょう。

1. 退職の自由について
まず、本件において、スタッフが退職しようとしていること自体をやめさせることはできません。
すなわち、憲法上、職業選択の自由が認められており(憲法22条)、民法上、雇用契約については、2週間前に退職の意思表示をすることによって退職をすることができると定められていることから(民法627条1項)、スタッフが退職すること自体をやめさせることは困難です。
この点は、最低2年間は務めるというような約束があったとしても変わりません。
しかしながら、本件においては、当該スタッフは、実際には、自分でサロンを開業する準備をしているようです。
このようなことを予防するためには、雇用契約の際に明確に退職後の競業禁止義務について定めておく必要があったと考えられます。
具体的には、
退職後2年間は同一市町村内において、同様のサロンやスクールの経営をしてはならないというようなことを雇用契約書及び就業規則において明確に定めておくべきであったといえます。
なお、この場合の競業禁止の期間については長くても2年程度にしておかなくては、規定自体が無効になってしますのでご注意ください。

質問@について
それでは、次に、具体的なご質問についてみてみましょう。
このような技術習得に関する費用の負担についても、雇用契約書において明確な定めがない場合には、退職したからといってスタッフに請求することは困難です。
研修費用等について、会社が負担するものの、1年以内に退職した場合にはその費用について本人に請求するというような規定を明確に雇用契約書において定めておく必要があります。
具体的には、
「第〇条(講習費用の返還) 甲は、乙が入社から1年以内に 退職した場合には、技術講習費用について、乙に返還を求めることができる。また、乙の債務不履行等に基づいて、中途解除した場合にも同様に甲は、技術・講習費用について、乙に返還を求めることができる。」
というような規定の仕方が考えられます。

質問Aについて
白衣の件については、ご相談のケースでは、退職しない場合には、会社が白衣についての購入費用を負担することになっているように思われます。
そうであるとすれば、退職するということになったことに伴って、その費用をスタッフに請求するということは、当然には認められず、それは、スタッフのミスによって、白衣を汚した場合にも同様です。
しかしながら、この点についてもやはり、雇用契約書において、明確に定めておくことによって、経営者に有利な結果を導くことができたといえます。
具体的には、
白衣の費用については、原則として会社が負担するが、1年以内に退職した場合には、2枚目以降の白衣の費用を本人に負担させる旨の規定を定めておくことが考えられます。

まとめ
以上みてきたとおり、退職に伴う様々なトラブルを防止するためには、雇用契約書、就業規則を整備する必要があると思われます。
そのような雇用契約書、就業規則を整備については、協会あるいは弁護士にぜひご相談ください。

 
皆川岳大

記事担当:
弁護士 皆川 岳大

 
 
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